経営セーフティ共済―税務・税法・税制上の取り扱い
経営セーフティ共済の税務(所得税法・法人税法等税制等)上の取り扱い
はじめに
経営セーフティ共済とは、取引先が倒産した場合、積み立てた掛金に応じて、資金の貸付けが受けられる国の制度をいいます。
この掛金は掛け捨てではなく、その全額が積立金として扱われます。
取引先の倒産などが起こらなかった場合は、40カ月以上掛金を納付していれば、解約による解約手当金というかたちで100%戻ってきます(利子はつきませんが)。
したがって、経営セーフティ共済は無利子の保険付の積立定期預金という性格をもっています。
ただし、経営セーフティ共済の掛金は、通常の定期預金とは異なり、その全額が必要経費(所得税法)または損金(法人税法)に算入できます。
そのため、経営セーフティ共済は小規模企業共済と並んで、よく節税ツールの一つとして紹介されています。
しかし、解約で戻ってきたお金は、その時点で、事業所得の雑収入(個人)または益金(法人)となります。
そのため、解約時の将来のことまである程度念頭においておかないと、経営セーフティ共済を利用した節税対策は、結局は、課税の繰延べにすぎなかったということになります。
1.毎月の掛金の必要経費または損金算入
経営セーフティ共済の掛金は、その支払った全額を税法上、必要経費(所得税法)または損金(法人税法)算入できますので、税金がかかりません。
ただし、個人事業の場合は、事業所得に限られ、不動産所得等は掛金の必要経費算入は認められていません。
平成23年1月現在で、毎月の掛金は、5000円~80000円の範囲内(5000円刻み)で自由に設定できます。
したがって、事業の収益の見込みに応じて、掛金を設定するというのが原則です。
ただし、加入した後に、掛金の増額・減額をすることもできます。
また、掛金を前払い(一括払い)することもでき、前払いした分もすべて支払った年の必要経費等に算入できます。
そこで、急に売上が増えてきたという場合には、掛金を増額して対処することもできますし、事業年度末までに加入し、その時点で最高額の掛金にして前払い(一括払い)するということもできます。
つまり、緊急の節税対策をしたいという場合にも、有効な節税ツールとなります。
逆に、事業が下向きになった場合は、一定の要件を満たしていることが必要ですが、掛金を減額したり、支払いを止めたりすることが可能です。
2.解約で戻ってきたお金は雑収入(個人)または益金(法人)という取り扱い
取引先の倒産など不測の事態が起こらなかった場合の掛金ですが、40カ月以上掛金を納付していれば、解約による解約手当金というかたちで100%戻ってきます。
そして、戻ってきた時点で、事業所得の雑収入(個人)または益金(法人)となります。
そのため、節税目的で経営セーフティ共済制度を利用したのに、結局、課税が繰延べされたにすぎなかった、ということにもなりかねません。
もちろん、経営セーフティ共済制度の本来の目的は、取引先の突然の倒産に対する保険ですが…。
経営セーフティ共済の出口戦略
したがって、解約する前に、解約手当金というかたちで戻ってくるお金の使途をあらかじめ考えておいたほうがいいでしょう。
赤字分の充当
一番わかりやすい例ですと、たとえば、事業が赤字になった年に解約して、まるまる赤字分に充当したというような場合ですと、税金はかからず、受け取った金額を全額使用することができます。
退職金の原資
退職金の原資として、利用するという方法もあります。
ただし、この方法は、事業主については、会社形態にしている場合にしか使えません。
個人事業主の場合、所得税法上、自分=事業主に退職金を支給しても、それは個人事業の必要経費にすることができないからです。
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