減価償却―分類②―任意償却
任意償却とは
任意償却の定義・意味など
任意償却(にんいしょうきゃく)とは、法人税法において、実際に減価償却費として損金に算入する金額が、損金経理をした(=記帳した)金額のうち、耐用年数にわたって定額法や定率法などの償却方法にもとづき計算した減価償却費(→減価償却費の計算)の範囲内の任意の金額とされていることをいう。
法人税法
(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)
第三十一条 内国法人の各事業年度終了の時において有する減価償却資産につきその償却費として第二十二条第三項(各事業年度の損金の額に算入する金額)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は、その内国法人が当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額(以下この条において「損金経理額」という。)のうち、その取得をした日及びその種類の区分に応じ、償却費が毎年同一となる償却の方法、償却費が毎年一定の割合で逓減する償却の方法その他の政令で定める償却の方法の中からその内国法人が当該資産について選定した償却の方法(償却の方法を選定しなかつた場合には、償却の方法のうち政令で定める方法)に基づき政令で定めるところにより計算した金額(次項において「償却限度額」という。)に達するまでの金額とする。
任意償却の位置づけ・体系(上位概念等)
減価償却
任意償却は、減価償却の分類のひとつである。
減価償却は計算上の減価償却費(「償却限度額」)が強制的に経費とされるか否かにより、次の2つに大別される。
- 強制償却
- 任意償却
任意償却の目的・役割・意義・機能・作用など
減価償却費の調整
任意償却は、計算上の減価償却費が強制的に経費とはされないことを意味する。
つまり、減価償却費の調整ができるということで、いくら償却しても(ゼロでもよい)、そして、いつ償却してもよいことになる。
これにより、たとえば、利益が少ない事業年度は減価償却費の計上を少なめにしておくといったことが可能になる。
なお、会計上は、企業会計原則により強制償却とされており、任意償却は認められていない。
企業会計原則
資産の取得原価は、資産の種類に応じた費用配分の原則によって、各事業年度に配分しなければならない。有形固定資産は、当該資産の耐用期間にわたり、定額法、定率法等の一定の減価償却の方法によって、その取得原価を各事業年度に配分し、無形固定資産は、当該資産の有効期間にわたり、一定の減価償却の方法によって、その取得原価を各事業年度に配分しなければならない。…
また、個人事業主に適用される所得税法においても強制償却とされており、任意償却は認められていない。
所得税法
(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)
第四十九条 居住者のその年十二月三十一日において有する減価償却資産につきその償却費として第三十七条(必要経費)の規定によりその者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額は、その取得をした日及びその種類の区分に応じ政令で定める償却の方法の中からその者が当該資産について選定した償却の方法に基づき政令で定めるところにより計算した金額とする。
任意償却の範囲・具体例
任意償却が認められているものには、次のようなものがある。
- 創立費(創業費)
- 開業費(法人・個人事業主)
- 減価償却費(法人)
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